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十七条の憲法⑥

◆弁護士コラム◆ 十七条の憲法には何が書かれている⑥?

六(むつ)に曰(いは)く、悪(あしき)を懲(こら)し善(よき)を勧(すす)むるは古(いにしへ)の良(よ)き典(のり)なり。是(これ)を以(もつ)て、人(ひと)の善(よき)を匿(かく)すこと無(な)く、悪(あしき)を見(み)ては必(かなら)ず匡(ただ)せ。其(そ)れ諂(へつら)ひ詐(あざむ)く者(もの)は、則(すなは)ち国家(あめのした)を覆(くつがへ)す利器(ときうつわ)たり、人民(おほみたから)を絶(た)つ鋒(とき)剣(つるぎ)たり。亦(また)侫(かたま)しく媚(こ)ぶる者(もの)は、上(かみ)に対(むか)ひては則(すなは)ち好(この)みて下(しも)の過(あやまち)を説(と)き、下(しも)に遭(あ)ひては則(すなは)ち上(かみ)の失(あやまち)を誹(そ)謗(し)る。其(そ)れ如(これ)此(ら)の人(ひと)は、皆(みな)君(きみ)に忠(まめ)無(な)く、民(たみ)に仁(めぐみ)無(な)し。是(こ)れ大乱(おほきなるみだれ)の本(もと)なり。

 

第六条は「善悪」がテーマです。

「勧善懲悪」を前後逆にした「懲悪勧善」という四字熟語が最初に出てきます。

つまり、悪を懲らし善を勧める、悪いことを懲らしめ良いことを称えるという道徳の基本的なことが説かれています。

「懲悪勧善」は、中国の古典の「春秋」という書物にも書かれており、聖徳太子がこの記載をもとに引用した可能性が高いと言われています。

ただ、「古の良き典なり」とも書かれています。つまり、昔の良い「のり」である、ということです。

「典」は「のり」と読み、のりは、神が述べたことから転じて、「ことば」「きまり」「しきたり」「おしえ」などという意味があります。宣、法、則、範、教という字はいずれも「のり」と読みますが、「のり」にはこのように様々な意味があるのです。

ここで、懲悪勧善が昔からの良い「のり」であるとなると、わが国に昔からある法律・しきたり・教えという意味に解釈されるのではないかと思います。

そうすると、悪いことをこらしめ、良いことを称えることは、わが国でも昔から教えられ、きまりやしきたりとなっていた、と解釈するのが自然に思います。

中国の古典に書かれている言い回しは、わが国に古くからある道徳を漢文に翻訳したときに、同じような意味にあるものとして使われたのではないでしょうか。

むしろ、ここで強調されているのは、第2文の「人の善を隠さず、悪を見ては必ずただせ」という、具体的な行動です。人の良い行動を見たら隠さない。つまり、上司に報告しなさいということです。また、人の悪い行動を見たら正す。つまり、その場で注意しなさいということです。これは、言うのは簡単ですが、行うのは難しいこともあります。

そして、へつらい、あざむく者は、国家を覆す「利器」とされます。へつらいあざむくとは、悪いことに従い、嘘をついて人をだますことを言います。「利器」は「ときうつわ」と読み、鋭い道具ということです。また、人民を絶つ鋒剣、つまり「鋒剣」は「ときつるぎ」と読み、鋭い剣のことです。非常に強い言い方がされています。

第3文までを訳します。

 悪いことを懲らしめ、良いことを称えるのは、わが国に昔からある良いしきたりです。したがって、他人の良い行動を見つけたら隠さず報告し、悪い行動を見つけたら必ず正しましょう。悪いことを正さず、見て見ぬふりをしたり、悪いことに従うような、へつらいあざむく人は、(悪事がはびこる原因となるため)国をくつがえすのに便利な道具であり、(国がくつがえると民は路頭に迷いますから)民を切る鋭い剣のようなものです。

また、「侫しく媚ぶる」は「かたましくこぶる」と読み、言葉巧みに相手に追従する人を言います。上司に対しては部下のミスを喜んで話し、部下に会ったら上司のミスを非難するような人が挙げられています。

これは、「へつらいあざむく者」が悪を正さずに悪に従ってしまう人を指しているのに対し、「かたましくこぶる者」は悪事を指摘してばかりで、人の善を称えることをしないことを指すと考えられます。

こうした人は「皆君に忠なく、民に仁なし」とされます。

ここで、「忠」は「まめ」と読み、「仁」は「めぐみ」と読みます。

言葉巧みに相手に追従し、他人の悪いことばかり指摘して、他人の良い行動を称えない人は、模範となるべき行動を見て見ぬふりをするので、良い人を称賛する機会を失わせてしまいます。これでは、「君」すなわち天皇に忠節を尽くしておらず、民を良い方向に教えさとすことが役人の仕事であるのに、それをしていないのですから、民を恵むことができません。これは、国を乱れさせる原因になっていまいます。

後半を訳します。

 また、言葉巧みに追従する人は、上司に対しては好んで部下の誤りを話し、部下に会ったときは上司の誤りを非難します。これらの人は、他人の悪い行動を指摘するばかりで、他人の良い行動を話したり、称えることをせず隠しているので、皆天皇に忠実でなく、また、(民を良い方向に教え諭すという仕事をしていないので)民に恵むことがありません。これは、大いなる乱れの原因になります。

まとめると、次のようになります。

第六条 悪いことを懲らしめ、良いことを称えるのは、わが国に昔からある良いしきたりです。したがって、他人の良い行動を見つけたら隠さず報告し、悪い行動を見つけたら必ず正しましょう。悪いことを正さず、見て見ぬふりをしたり、悪いことに従うようなへつらいあざむく人は、(悪事がはびこる原因となるため)国をくつがえすのに便利な道具であり、(国がくつがえると民は路頭に迷いますから)民を切る鋭い剣のようなものです。また、言葉巧みに追従する人は、上司に対しては好んで部下の誤りを話し、部下に会ったときは上司の誤りを非難します。これらの人は、他人の悪い行動を指摘するばかりで、他人の良い行動を話したり、称えることをせず隠しているので、皆天皇に忠実でなく、また、(民を良い方向に教え諭すという仕事をしていないので)民に恵むことがありません。これは、大いなる乱れの原因になります。

このように、役人が、悪い行動を見て見ぬふりをしたり、悪いことに従うのは非常に危険です。また、良い行動を見て見ぬふりをして称えず、人の悪いことばかりを指摘するのも、結局は嘘をついているのと同じであり、正しい情報が行き渡らず、国を大きく乱れさせる原因となるのです。

当たり前のことが説かれているようですが、いざ実践となると、大変なことです。しかしながら、良いことを良いとして賞賛し、悪いことを悪いこととして正すのは、わが国古来からの当然のしきたりだったわけです。聖徳太子は、こうした、古来からの在り方に立ち返って、初心忘るべからず、もう一度行動してみましょう、と諭しているのです。

以上

 

 

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